第5回セッション ダイジェスト(2)

chari-kyoto2008-11-20


■プレゼンテーション
「商店街による民間駐輪場整備」
中川 大(京都大学大学院工学研究科教授)
・商店街による民間駐輪場整備ということで,ロックン広場に商店街の皆さんが,がんばって駐輪場を作ってくれた。市民の協力によって,都心部の自転車問題を解決したいという思いで,違法駐輪が多かったロックン広場の一角に駐輪場ができた。
 これまでのきまりでは,路上に駐輪場を作るのは難しかったが,規則など新しくなって,京都市や府警と相談して実現に至った。
・京都の都心部の路上駐輪は6000台〜8000台となっており,何台分の駐輪場を作れば解決するか。
都心部への流入交通量はパーソントリップ調査で1日338,300トリップとなっている。そのうち自転車は,48,400トリップで14.3%,7分の1を占めている。
・48,400トリップのうち,6000〜8000台が違法駐輪であるが,これは中間的な数字なので,何回か回転していることも考えると15,000台くらいの違法駐輪の可能性はある。
・しかし,相当多数の人は,有料駐輪場,自宅,商店の駐輪場などにちゃんと停めていることになる。流入交通量は外からの人だけでなく,中の人が外から戻ってくるのも含めた数字である。
京都市全体の自転車利用率は21.6%。都心部での利用率は7.3%なのでこの数字は相当低い。本当は自転車で来たいが停めるところがないので,別の手段で来ている人が相当いると考えられる。
・厳密に数字は出せないが,京都市の一般的な率の21.6%と同じ率でいくと,ざっと24,700人の人が,本当は自転車で都心に来たいと考えているがしていない。都心では相当多数の潜在的な需要があると言える。
・何台分の駐輪場が必要かとなると,違法駐輪が6000〜8000台なので,8000台分と,24,700人の潜在的需要があるので,2回転するとして,12,350台分の合計,20,000台が収容できる駐輪場が必要である。
・市のアクションプログラムでは都心部に2,500台の駐輪場設置になっているが,全部できても20,000台には遠く及ばない。都心部に少しでも駐輪場を作っていくほうがよいように見えるが,焼け石に水である。現状のやり方では火に油である。自転車で来たい人は数万台あり,潜在的需要を引き起こすことになる。都心部は自転車で行きにくいから遠慮している人が相当いるということを知っておかなければならない。
・むやみに何かを作ってどうぞ来て下さいというのでは,火に油の可能性がある。
・現状のやり方について,市営駐輪場は現在1日1回150円,1ヶ月定期2,700円の料金である。市バスは往復440円,1ヶ月定期9,240円である。都心部でこの価格でどんどん駐輪場を作れば,ますます高い公共交通から自転車への転換が進む。バス,地下鉄から安い駐輪場を選ぼうかという人をどんどん増やすことになる。
・駐輪場利用料金も定額制で1日1回150円である。これは長く使えば使うほど得だということになる。2時間停める人も12時間停める人も同じ料金。長々と占有してくださいと言っているようなもの。1台の施設を1日ひとりの人が使うだけになってしまう。
・ロックン広場では最初の3時間は100円,最初の30分だけなら50円,3時間以後,30分ごとに50円としている。8時間で600円になり,これだと長時間駐輪する人はいない。これは,長時間の人はバスで来て下さい,都心の空間を長々と占有することがない行動をしてほしいというメッセージを含んでいる。
・2万台必要なところに,1日2,500台しか停められないのでは焼け石に水であるが,2,500台分が3回転,4回転もするようになると,かなりの人の受け皿になる。長く停める人は別の手段で来て下さいということになると,解決の方向も見えてくる。
・ロックン広場はたくさんの人に利用してもらっている。駐車料金を支払って多くの人が利用している。ちゃんとお金を払って停めてくれる人が相当たくさんいるということがわかったことは,最大の成果である。
・違法駐輪は相変わらずし放題であるが,撤去保管費用を払うことの推定期待値は,多く見積もって2時間12円程度である。ロックン広場で2時間100円,市営駐輪場で2時間150円で,違法駐輪の方がコストが低く,駐輪場に行く気にならない。
・市営駐輪場は同じ料金体系でやっているが,問題解決に向かって進んでいない。焼け石に水であってほしいと願ったが,我々の努力は徒労であった。違法駐輪の対応や市営駐輪場の運営についてこれまでと違う方向で動くかと思ったが,期待はずれで,時間の無駄であった。
・結論として,ただで置き放題の世の中において,ちゃんと停めてくれている人たちに対してただただ感謝をしたい,というのが率直な気持ちである。
 問題解決がしていない,期待すべきことを読み違えていた,失敗だったと言えることに対して,救いとなっているのは,まじめにちゃんと停めてくださる人々である。今日もたくさんの人がロックン広場の駐輪場を利用している。期待値が10円で違法駐輪できるところがたくさんある中で,ちゃんと停めてくださる方にただただ感謝をしなければならない。
 駐輪場を作ることが目的ではなく,都心の問題を解決したい,動きたいということであるが,それに対してはまだまだであると感じている。

■コアメンバーからの意見・提案[その2]
○青空駐車は12円程度で停められるが,いたずらされるなどのリスクを考えるとやはり,駐輪場に停めようと思う。
○運営方法について,ロックンプラザは,駐輪施設として使っているが,街中の商店で運営の組織を作って,全体的なマネジメントを行っている。
○ロックンプラザは,2回転,3回転の稼働率ということで,付近の違法駐輪を防いでいる。地域や商店街が中心にやってこられたことに敬服する。
○料金体系について,駅での駐輪で通勤や通学で8〜10時間駐輪する料金と,都心部,商店街で利用時間が短い場合の利用料金を見直していく取組を進めている。市内全てを同じ料金にするということは,平等であるとも言えるが,実態に応じた利用料金,利用形態によって変化させていこうと考えている。
○駐輪場にボランタリィで駐輪する人は少ない。学生へのアンケートでなぜ駐輪場に停めるかと聞いたところ,パンク被害や盗まれたなど痛い目に会って駐輪場を使うようになったとのことである。ロックンプラザは学生でも利用しやすい料金であるが,学生に対してどのように利用促進するか方法など教えてほしい。
○ロックンプラザは1〜2時間くらいの駐輪の人が多い。近くにある市営駐輪場は1時間無料でその後150円,ロックンプラザは3時間100円でそれから150円となる。映画で3時間以内の人,買い物や周遊する人など用途に応じてどちらを使うか選択している。
○利用の促進として,チラシを作って啓蒙,広報をしている。ロックンプラザだけを使ってもらうことが目的ではなく,市営も含めて用途に応じて使い分けてもらうのがよい。学生の大多数もお金は払いたくないと考えているが,目指しているのは,秩序ある交通環境を作り出していくことで,対価を払ってでも駐輪するという人達の把握をしていきたい。
○駐輪場を整備することで,きちんと停めるという見た目の効果もある。ロックンプラザ近隣の商店街などの人々のプラスの評価はあるのか。
○広場はよくなっている。消防活動用のスペースも確保されて以前より活動しやすくなっている。新しい空間もできて,景観上も昔よりだいぶよくなっている。
○ロックンプラザに駐輪場ができる前から駐輪しているが,以前は六角広場に駐輪して戻ってくるととんでもないことになっていた。倒されたり,自転車の上に自転車が乗っているようなぼろぼろになっていた。駐輪場ができてからは,きれいに並んでいるし,駐輪自転車の間隔もあって傷がつくこともない。自転車を大切にしている者にとっては,お金の問題ではなくありがたい。
○自動車道を作れば作るほど車が増えていくのと同じで,駐輪場も作れば作るほど潜在的なユーザーの利用が増えてくるということである。最近,世界のいろんな都市でコミュニティサイクルが普及していきているが,駐輪対策が困難な中で,コミュニティサイクルが生かされる可能性はあるだろうか。
○たくさんの人が来ることで,都心の限られた空間が占有される。走行空間でも自転車が多くなると占有が発生する。
 ひとりの人が1台を乗っていると,乗っていないときには置いておかなければならず,たくさんの空間を占有することになる。時間的により多くの空間を占有しているのは駐輪である。
○ひとつの自転車をレンタサイクルで共有すると,一人が乗ってきては,また別の人が乗っていくということで,駐輪場が少なくて済み,合理的である。都心に来て買い回りなどいろんな場所を回りたい人が,相互に利用できる。同じ駐輪場に停まっている時間が少なくなり有効な方法である。
○都心に公共交通機関で来た人も利用したり,都心の周辺に自分の自転車を停めて,レンタサイクルを利用するなど,合理的でいい方法である。
○駐輪場は必要であるが,停められる場所ができればさらにたくさんの自転車が流入してくるという推定は悩ましいことである。ちょっとくらい駐輪場を作っても焼け石に水か悪ければ火に油を注ぐということである。もうすぐ御射山と新京極に更なる油を注ごうとしているが,本当に油を注ぐことになるのか,御射山ができた時点で判断しなければならない。現状がどうなのか,どうやって政策に反映させていくか。
○4万台の流入トリップがあって,8千台が放置になっている。あとはどこへ消えているのか。その人たちがとこに停めているのかを知ることでうまい解決策が出てくるのではないか。分散して駐輪するためのアイデアが潜んでいるのではないか。
○いくら駐輪場を作っても火に油というのは,4万台の問題ではなく,8千台の問題である。油を注いで8千台がさらに増加したら大変である。これが消えていった4万台にいくなら問題はない。いかに分散させるかを考えた方が効率的である。
○駐輪場を作っても無駄であるというより,作らずに解決する方法があるかもしれない。これがレンタサイクルにつながるかもしれない。パリの事例が日本に合うかは検証しないといけない。むしろ京都では,バス往復440円で駐輪なら150円で済むことが問題である。駐輪場の値段を上げて,その分バスを無料にすれば潜在的な需要も成立しなくなる。ここでもバス,自転車の優先順位の問題が出てくる。
○駐輪場を作るのは無駄ではなく,今のやり方であれば無駄であるという意味である。駐輪場を作るやり方や使い方を考えるならあった方がよい。
○時間の考え方は重要である。長い時間を停める人にはそれだけ長く公共の場所を提供することになる。潜在需要の中には,例えば四条河原町に停めて大阪へ電車で行くような人は含まれていない。これらを加えると何万という潜在需要になる。遠くへ行く人に駐輪場を提供するのはきりがない。
○せっかく作った駐輪場をいかに有効に使うかが重要。それを考えるのが最初なのに,現状ではそうなっていない。
○平成12年に総合計画を策定し,駐輪場整備と撤去という2大取組を行ってきた。その結果,市内全体で4割違法駐輪が減ったが,都心部では25%増えた。新たな取組としてアクションプログラムを策定し,富小路六角に530台,御射山に1041台,新京極に700台を予定しているが,計画の2500台には足りない。当初のアクションプログラムでは御射山を1270台としており,合計2500台としていた。
○プレゼンのときに賢い人間は違法駐輪をすると言ったが,撤去の推定期待値が12.8円ということが数値として出てきた。駐輪の問題は,青空駐輪と普通の駐輪場との戦いである。効用としてどのようにメリットがあるようにするか。これを考えないといけない。でなければ,ユーザーも使わないし,民間が駐輪場を作るにもビジネスモデルとして成り立たない。規則を守る人が損をするということで,青空駐輪場は総合的なシステムの中で考えていかなければならない。

第5回のダイジェスト(1)

■プレゼンテーション 

「配達屋の視点から見た自転車事情」
  藤井 輝男(錦市場 津之喜酒舗 代表取締役
・ 1788年,220年前に創業の錦市場の酒屋で8代目。配達の機動力はまぎれもなく自転車である。
・ 得意先は主に,木屋町祇園エリアであるが,以前は1軒配達に行っては戻ってまた行くという,何回も往復をしていたが,今では得意先も増えてルート配達をしなければ間に合わなくなっている。
・ ライトニングという雑誌のビンテージ特集で,今使っている自転車FUJI HOPE号が紹介されることになった。2台がカスタマイズされて,ビールケース3ケースとその上に雑瓶を載せて運ぶことでき,軽トラックに優るとも劣らない機動力が可能になった。
・ 使い方としては,通勤でも趣味でもなく,商売道具として,自転車がないと商売が成り立たない。毎日使っており,道具として大事にしている。
・ 錦からゼストへ来るルートは,全て自転車通行禁止となっている。押して歩かなければならない。前面投影面積は押して歩くほうが倍になるし,押すよりまたがって足こぎしたほうが安全性が高い。
・センターオブ田の字は便利なようで,自転車は非常に不便である。FUJI HOPE号の利便性,機動力がフルに発揮できない。
・街中で商売をする者にとっては,なんとか四条通を自転車が通れるようにしたい。どう解決したらよいかを皆さんと一緒に考えていきたい。 
・ 解決策としては,ライセンス制しかない。自転車道などは実現するにも先のことになるし,バスレーンのことなど問題もいろいろある。
・ライセンスの取得資格としては,田の字地区で商売をしていること,講習を受けること,お金を払うこと,マナーを徹底することなどがあってもよい。
・HOPE号のよいところは,一方通行でも逆走できるし,何よりも非化石燃料である。商売では最大限生かしている。
・街に安物の自転車が多すぎる。放置自転車の重要な原因である。HOPE号は絶対に放置しない。自転車に対して皆さんが持つ価値が低い。自転車に愛情を持てば放置しない。自転車に愛情持ちましょう,安売りしないようにしましょう,いい自転車に乗りましょうというキャンペーンなどすればよい。
・自転車は法的に軽車両。車両だから四条通で通行できないところもある。歩行者と自転車は根本的に共存できないのではないか。京都は道が狭いから,歩行者専用,自転車専用などの道路は作れない。
・ちょっと止め,長時間止め,放置という3つの駐輪時間で,ちょっと止めは構わない。ダイエーの前にも駐輪場があって1時間いくらというふうになっている。買い物に行けば,10分程度停めるだけで,少しでも安いものを買おうとするのに,駐輪で100円とかとられるのは許せない。30分は無料にして,それを超えると500円とか高い金額がとられるなどのシステムにすればよい。
・センターオブ田の字地区に住んでいるという特権意識みたいなもので,中京区住民シールを作って,短時間なら路上に停めてよいことにする。すぐに移動するからというアピールにもなる。いくらかのお金がかかることと,エレガントな駐輪マナーを身に着けることという条件でシールを発行するという制度をつくればよい。
・センターオブ田の字地区をいっそ,すべて自転車の乗り入れを禁止してはどうか。しかしその場合でも,商売をしているとか,住んでいる人は乗り入れできるようにする。どうやって区別するかは難しいところではあるが。
・ぎびしい目で科罰をするとか,登録制にするなら規制が必要である。ICチップとかナンバーの登録などして放置している人をとことん追い詰めるような仕組み。

2 コアメンバーからの意見・提案[その1]
ロードプライシングについて,駐輪するときのコスト負担は行われてる。一番走りたい人,走る必要がある人に優先的に課金するということは考えられる。
○センターオブ田の字地区は密度が高いので自転車にとっては歩行者が邪魔となる。
○駐輪場確保と走行環境がこのセッションの大きなテーマとなっているが,自転車政策には自動車に我慢をしてもらうしかない。自動車に半分だけ我慢してもらうということは不可能なので,全部我慢してもらう必要がある。自動車道1本で自転車道が4本くらいできる。一番端を駐輪場にして,真ん中を早く走る自転車の道路にすればよいのではないか。
○荷物を山ほど積んで走る人,車いす代わりに乗っている人などいろんな自転車の人がいて,自転車同士でも共存しなければならない。歩行者との共存も歩行者の密度が低いところでしかできない。歩行者と自転車を分けるなら車道をいじる必要がある。その場合でもバスをどうするのかということは最後まで問題となる。
○普通は店の前まで自転車に乗ってこれる。ゼストでも自転車が走ってよいのではないか。アーケードの中でも,自転車に乗るのが悪いのではなくて,怪我をさせたりすることが悪い。もっとゆるやかに共存できる方法はある。
○市役所の前の歩道をスピードを出して自転車が走ってきて非常に怖い。しかしモラルとか愛があれば,専用のレーンなど必要はない。ゆるやかな共存というのが現実的にはベストである。
○愛でもってゆるやかな共存が実現しないなら,優先権を明確にする必要がある。歩道では自転車に優先権はない。車道の左端は自転車とバスに優先権,真ん中は車に優先権があるということを実際に路上で実現して,習慣になるまでやらなければならない。今がんばると次世代につながっていく。
○ライセンスに関して,自転車に乗るときの道徳的なマナーがない人が多いと思うので,教育する場が必要であると思う。
○街中には簡易の駐輪施設で無料,駅前には大きな駐輪場で有料でよい。錦市場は観光客には人気があり,どこに停めればよいかは聞かれる。観光の寺院などには最近駐輪エリアが作ってある。清水寺は清水観光駐車場に駐輪して,周辺の観光もできるが,二条城などは市営駐車場にもお金がかかり,二条城への入場にもお金がかかる。
○ハード整備は行政との協力が必要であるが,ソフト面としてライセンスは是非やってほしい。自動車免許でもゴールド免許になるとちょっとマナーの意識が変わる。ライセンスをすることによって,意識の高い人をほめてあげることができれば,マナーの良い人はさらに良くなるし,それをみていいなと思う人も増える。マナーの良い人をほめてあげるようなことができればよい。

第5回セッション開催しました

chari-kyoto2008-10-24

 10月24日、第5回セッションを開催しました。
本日のプレゼンターは、
1)藤井輝男氏(錦市場 津之喜酒舗 代表取締役
 「配達屋の視点から見た自転車事情 」

2)中川 大氏(京都大学大学院 教授)
 「商店街による民間駐輪場整備」

です。
藤井さんからは、日頃自転車を利用する中で感じていること、都心部にともに暮らす家族の意見などをお話しいただきました。
中川さんは、商店街等まちなかの有志で運営する駐輪場のミッション&実験、そして課題についてお話しいただきました。

第5回セッション

第5回セッションを以下の通り開催します!お気軽にお立ち寄り下さい。

□第5回 自転車・京都街角セッション
日時:2008年10月24日(金)午後4時〜6時(偶数月は午後4時からです)
場所:京都御池地下街 ゼスト御池 河原町広場
内容
?藤井輝男氏(錦市場 津之喜酒舗 代表取締役
 「配達屋の視点から見た自転車事情 」

?中川 大氏(京都大学大学院 教授)
 「商店街による民間駐輪場整備」

第4回セッションのダイジェスト(2)

「新しい自転車の使い方を創造する仕組み」
山田 章博 氏(有限会社市民空間きょうと代表)

・ 自己紹介
  大阪・泉州育ち,大学から京都在住。まちづくり・都市計画が仕事。
  自転車のロードレースの草レースに参加。
  COP3でグリーンマップのデザイン。
  アジェンダ21フォーラムの交通ワーキンググループ,歩いて暮らせるまちづくり推進会議参加。
・ 自転車についてのワーキンググループで実験をたくさん行った。2000年から3年間,まちなかに駐輪場を作ってはどうかという実験を行った。富小路六角の駐輪場がそれにつながっている。
・ 生祥公園前のコインパーキングを借りて駐輪場設置の実験
   放置自転車が一切なくなった。
・ 嵐山でのレンタサイクルの実験
  嵐山で借りて嵐山以外で返却できるようにする。返却が一番多かったのは四条大宮であった。
・ 都市型レンタサイクルの実験
  日常で自転車を利用する人の行動として,JR二条駅で借りて,四条烏丸で返す人が多かった。
・ 歩いて楽しいまちなか戦略の社会実験で,6日間,11箇所に駐輪場設置を行い,アンケート調査も行った。高島屋の民間駐車場に作った駐輪場はあっという間にいっぱいになるが,永松記念館に作った駐輪所はあまり利用がなく,50m〜100mの違いで利用率が全然違ってくる。まちなかの駐輪場は一律150円とされているが,料金と需要と供給を考える必要がある。
・ 車が増えたことで,渋滞が起こる。市電が廃止されたが,渋滞でバスは不便。自転車利用が増える,自転車の価格が安くなる。車を減らす取組で自転車利用が増える。マナーの意識も低下する。システマティックに考えていく必要がある。自転車がこれから増えていくということを前提に仕組みづくりをする必要がある。
・ 4つの提案
   1 自転車が「走る」「止まる」ことを前提にした街路づくり
   2 路上駐輪を抑制し,分散させる。駐輪空間と制度のデザイン
   3 公共交通(バス)の利用を促す仕組み
   4 自転車にもIDカードを
・ 細街路では
  自転車も一方通行にする。
  車と自転車と歩行者は同等の権利を持つ。ゆっくり走る自転車の優先帯を設置する。軒下空間,路側帯は好きなように使える。何を置くかはそこの人が責任を持つ。
  停止線も現状の位置では意味がない。前に出して視認性を高める。
  歩行者のマナーとは,車とか自転車を阻止する勇気をもつこと。
・ 大通りでは全ての大通りには2輪レーンを設置すべき。歩道は自転車を通さない。高齢者や子どもは歩道を走ってよいが,歩行者と同じようなスピードで走る。
・ 大通りの交差点
  横断歩道の自転車横断帯は,道交法上,自転車は通行する義務がある。これが非常に危険である。
・ 自転車は直接目的の場所へ行けるのが基本。ドアtoドア。これができないような
駐輪場はおかしい。少数の自転車であれば,沿道サービス帯で対応できるが,長時間駐輪は問題となる。
 長時間駐輪する人にはパスを発行する。どこの駐輪場,駐輪帯でも停めることができる。自転車にはICチップのステッカーを貼り付ける。
撤去の権限は地域に与えて,撤去した自転車は地域で保管する。
・ 雨の日の傘さし自転車は危険。雨の日にはパスでバスが乗れるようにする。
・ ルール,マナー
  身分証明証を携行する。IDカードには減点,加点などがわかるようにする。
・ このセッションではいろいろと提案がでる。脈絡のあるものにまとめたい。アプローチの仕方も個々に異なる。共通点はまとめていく。やわらかい政策パッケージにしたい。セッションが一通り終われば,ロードワークを行って,提案が有効性のあるものか検証したい。
・ 2001年の都心のエコ交通プランを作った。今見ても古くない。四条通の狭い歩道に歩行者が押し込められている。ここには自転車が入っていない。自転車の扱いをまとめ切れなかった。

■コアメンバーからの意見・提案[その2]
○10年経っての現状はいい方向に向かっているか。違法駐輪が改善したか。
○10年で自転車も増えているし,迷惑な放置自転車も増えている。取組も進んでいるが実態に追いついていない。木屋町の駐輪場も地元と行政の協力でできた。しかし,その方法論や制度が一般化していない。ノウハウを蓄積する仕組みが整えばよい。環境が整えば,自転車利用も増える。
○IDカードに駐輪パスの決済機能を付けて,ビジネスモデルとすることができる。撤去をしても誰が捨てたかわからず,捨てたもの勝ちである。IDカードの導入は行政的には難しいのか。
○背番号制のようなものになって,個人のプライバシーや発行や取扱をどうするかという問題が生じる。現実的には困難。
○実際に行うには条例などの根拠は必要となるが,自動車でできているのだから,自転車でもできるのでは。
○ICチップを埋め込んで,撤去の車が来たときに自転車をスキャンすると,所有者に撤去しますという連絡がいくようにする。
○防犯登録は5年で切れる。自転車は車に比べてルーズな扱いである。防犯登録も知らない間に切れて,自分で管理できなかったりする。あまり機能していない。
○防犯登録は名前のとおり,盗まれるのを防ぐためのシステムである。現在あるから利用しているのかもしれないが,違法駐輪に利用するならバージョンを変えるなどが必要。違法駐輪のためのシステムは現在全くないのが現状である。
○大学で自転車の登録をしている。駐輪スペースの把握目的と周辺に駐輪しないようにする目的がある。自治会などでもできるシステムであると思う。
○沿道サービス帯にベンチや看板を置くのはよいが,駐輪場にすると寺町四条のようなことになるのではないか。
○沿道サービス帯をどうするかは,その家の人が権限を持っている。駐輪したい人はその家の人にお願いして駐輪する。そうでないのは即撤去。撤去は町内会で行い,近くの廃校のグランドにでも保管する。
○商売の視点からすると,歩行者も車も邪魔であるが,全体の共存は難しい。2〜3軒先の店に行くのに,ちょっと停めさせてほしいというのであればいいよと言うし,そこでコミュニケーションも生まれる。
○ICカードで管理されなければならなくなる前に,自転車環境がよくなればよいが,無理なら押さえつけていくしかない。プレゼンは愛をテーマにしようと思っているが,これまでの意見を聴いていて,愛では無理かと思うようになってきた。
○レンタサイクルの顧客には違法・迷惑駐輪はしないように言っている。市の駐輪場利用を勧めている。利用者の声として,町中には駐輪場がない,2時間探したというのもある。行きたい店に駐輪場がない場合は,店に聞くように言っている。レンタサイクルも増えてくると思うが,免許や講習,防犯登録の改良など新しいシステムが必要である。

第4回セッションのダイジェスト(1)

1 プレゼンテーション 
「みんなで楽しく自転車利用をインクルーシブデザイン」
塩瀬 隆之 氏(京都大学大学院情報学研究科助教
・本日のプレゼンテーションの流れ
  1 市民参加・ユーザー参加の甘い罠
  2 インクルーシブデザインとは何か
  3 みんなで楽しく自転車利用をインクルーシブデデザイン
・市民・ユーザーに届くはずの情報発信の怪
  届けたはず(つもり)だから読まないほうが悪い。
・市民参加型・ユーザー参加型の誤解
 「なにか意見があれば何でも言ってください。」と怖い顔で言われても。
・中途半端にしか届かない市民・ユーザーの声
  点字ブロックが必要というので取り付けたが,自転車が放置してある。
障害者トイレが必要というので設置したが,2階へ行くエレベーターがない,段差がある。
・なぜこうなるか?
 他人事,人事だから,具体的に解決されない。どこまでいってもその人の気持ちになれない。
・ 疑似体験をする。
 相手の立場に立ち,その人の気持ちになる。自分の問題として捉える。
 学校で総合学習の時間に取り入れているが,「車椅子は段差があると大変」とか「点字ブロックの上の自転車は見えない人に邪魔」という毎年同じ調査報告に終始してしまう。
 アイマスクや車椅子体験を子どもがすると,「かわいそう」,「たすけなければ」といった感想ばかりになる。解決につながらない。〜〜のためにというのは人事である。
・インクルーシブデザインでは,目の見えない人,車椅子の人や高齢者をデザイ
ンのプロセスに巻き込む。
・インクルーシブデザインワークショップの流れ
 できるだけ多様なユーザーをとりこめるようなデザイン並びに実際にユーザーを巻き込んだデザインプロセス。
 ユーザー自らが参加するデザインワークショップで最初から最後まで一緒にデザインプロセスを体験する。フィールド調査からプレゼンテーションまでフィールドユーザーに参加してもらう。
 いままでの市民参加,ユーザー参加は「お客さん」か「クレーマー」であった可能性がある。ほんとに同じテーブルについていたか。
・例えば電気製品,ポットを見えない人が利用する場合,コンセントの位置を確
認したり,台所は濡れているので不安がある。
 歯磨き粉も分量がわからないから口にくわえて量を確かめるが,不衛生である。
 ガムやチョコレートのように1個ずつのデザインなら高齢者でも使いやすい。いろんな人にも使える。
ユニバーサルデザインとの違い
 はじめからみんなに使いやすいデザイン。結果として誰もが使いにくいことがある。最適解が唯一つ存在するという思い込み。徹底して一人の個人の困難や工夫に注目する。
・「○○さんのために」という姿勢は助ける人助けられる人という構図を暗に仮定してしまう。これでは他人事である。「○○さんとともに」という姿勢で具体的なものを実際に作ってみる。横に視覚障害者や車椅子の人がいるのを忘れてしまうくらいにまで模索していく。
・ポストの上などに空き缶を置く人をゴミ箱に捨てるような方向に導けるか。置かせないようなデザイン,ゴミ箱に導けるようなデザインにすることが大事。
・ 自転車ミニワークショップについて
 「四条どおりを通りたい」なぜとおりたいのか掘り下げて止めたい理由を突き詰める。
 自転車利用は多様なユーザーがいる。ミニワークショップでは子供乗せとロードレーサーについて話をする。

・提案について
 自転車マイスター&免許制  3人乗り自転車免許
               ロードレーサー免許
               美しい駐輪マイスター
  マナー講習の義務化(大学新入生,転居者)
 戦略的撤去自転車数削減システム
・3人乗り自転車禁止の波紋。図書館に車で行くようになった。公園に車で行く
ようになった。こっそり乗っている人もいる。公共交通機関も不便で使いにくい。
 警視庁に苦情が殺到するようになった。3人乗せ自転車の研究開発に取り掛かる。1台7〜8万円くらいかかる。買う人が少なければますます値上がりする。
 結局,乗らない人の意見でこのようになってしまった。
・3人乗り自転車免許の発行を条例化する。
 子どもを危険にさらしたい親はいない。倒れない工夫で自転車に乗っている。子どもの安全には配慮している。
 前後に10kgを乗せてラインを走るテストをして免許を発行する。
 3人乗り自転車をレンタルして支援を行う。
 パワーとマナーがあれば乗ってもよしという条例を!
ロードレーサー免許
 自転車は車道を走れといっても,大量に自転車が走ると危ない。ある程度のスピードやサイドミラーを付けるなどマナーがあれば走ってもよいとする。路上駐車があると走行するのが危険である。
・美しい駐輪マイスター
 どうしても,路上駐輪をしたい人がいるかもしれない。美観に合うような,絵になるような自転車なら駐輪OKとする。自転車に乗る見本となる人を増やしていこう。そうして自転車のマナーをよくしていこう。
・マナー講習
 自転車の値段が安くなってきた。乗り捨てる人もいる。マナー教育の必要。免許制と連動。大学の新入生にマナー講習を義務化する。毎年25000人の新入生がいるので,5年で10万人になる。乗る人も乗らない人にもマナー講習をする。自転車のマナーを全体に伝える。
・なぜ路駐するのか。
 ちょっと停めた人,遠出するので一日停めた人,はなから捨てるつもりの人がいる。ちょっと停めた人とはなから捨てる人とを同条件で扱っているのはアンフェアな状況である。
・戦略的撤去自転車数削減システム
 目標をゼロにするのは無理。家電でも1万人あたり120台程度は捨てられている。捨てるひとはどこにでもいる。家電の数値を目標にしてもよい。
 撤去の現状把握が必要。アンケートなどにより。はなから捨てる気の人は引き取りに来ないから,フィードバックは無理なのでフィードフォワードで分析する。
 季節変動で3月が多いなら,明らかに大学生によるものである。大学で入学時に登録をして,卒業の時には自転車をどうしたかを調査する。

【意見交換】
○免許を持っているからルールを守っているのではなく,取締があるからルールを守っている。取締をどうしていくのかについてのアプローチは,インクルーシブデザインにはないのでは。
○取締を行っても,自動車では事故などはなくなっていないから,自転車でも同じことは言える。しかし,よかれという見本として免許がないともっと怖いことになる。免許制はステップとして捉える。いきなり取締だけしてもマナーはよくならない。望ましい自転車の乗り方を知る機会として講習等を行う。
○公のことは官,私的なことは民がという発想があるが,なんでも官が悪いというのではなく,市民もデザインをインクルーシブしてもらうという構造が必要である。
○免許制は取締のシーンが前提としてある。取り締る人がいないのではないか。
○免許をもっているかどうか,最初はいちいち停めて確認することになる。しかし,乗り方や走り方がふらふらしているような人を中心に停めていけばよい。全員を停めなくてもよい。
○撤去された人へのアンケート調査は行っていないが,府警からも盗難自転車が多いということで,2〜3回撤去されている人などの把握はしているかと言われている。撤去された人,放置する人に対するアンケートもやってみないといけなかと思っている。
○廃棄する自転車も最初にデポジット制で消耗品とするような協議も必要かと思う。
○ワークショップでも自転車取得税などが出た。
○撤去された自転車の流れを分析する必要もあると考えている。

第4回セッションを開催しました

平成20年9月25日(木)、第4回セッションを開催しました。
(写真は、今手元にないので、しばしお待ち下さいませ!)

今回のプレゼンターは、
  塩瀬 隆之さん 「みんなで楽しく自転車利用をインクルーシブデザイン」
  山田 章博さん 「新しい自転車の使い方を創造する仕組み」

でした。
 塩瀬さんからは、インクルーシブデザインという、ユーザーサイドの視点からデザインする手法を紹介いただき、これを自転車政策に生かしていく提案がされました。これまでは、駐輪場などハード整備を伴うことが論点に上がっていましたが、マイスター制、免許制など「マナーを守る運転」のインセンティブになるような提案をいただきました。

 山田さんからは、自転車ユーザーの視点から、道路形状の改善点に関する具体的な提案や、放置自転車を無くす効果が期待できるID制度の導入など、いわば自転車の市民権(?)の向上につながるような提案をいただきました。