第6回ダイジェスト(2)

プレゼンテーション 
「駅前駐輪場整備と鉄道事業者の役割」
前田 勝(京阪電鉄株式会社 鉄道企画部課長)

・平成16年4月から現職で,駅前の自転車にかかわった仕事をしている。4〜5年間の体験を含めて,個人的な見解として話をする。京阪電車の公式見解ではない。
・今までの鉄道事業者は自転車対策は面倒なもの,かかわりたくないとしてきた。それは道路管理者の仕事であるとしてきた。地元や行政は駅前の自転車は鉄道に乗る人々のものではないのかと言い,我々は自転車の利用者はそれだけではないと言って,責任のなすりつけ合いであった。これでは状況はよくならない
・できることとして啓発ポスターを貼っている。ポスターはいろんなことと抱き合わせでないと効果がないもの。これまで逃げてきたところでもあるが,ほっておいたらどうなるのか。
・駅前に自転車,バイクがいっぱいであると,誰が困るか。街にとってもひどい街だと,鉄道事業者にとっても駅前がひどいと言われ,けが人まで出ることになれば,地元も行政も鉄道事業者も困る。そこで何ができるか。役割を分担してできないか。
鉄道事業者や街にとって,自転車,バイクは迷惑な対象ではない。大切なお客様である。必要な施設をきっちり整備して,ルールを徹底する。できることから考えていく。
・ポスターを作るだけでは効果がなく,少なくとも3つセットが必要。まず,置く場所。これまで駅前に大きな箱物を作って,利用者が少ないという状況であった。駐輪場の利用者は1種類ではない。通勤,通学で長時間停める人,コンビニでの買い物など短時間停める人,場所に応じてどんなニーズがあるかで作るべき施設が変わる。実態,ニーズに合わせる必要がある。
・一番大事なのが違反者へのペナルティーである。ルールを守らない人には撤去もし罰金を取るくらいでもよい。そして,ポスターだけでなく,地元と手を組んで連携して啓発できるか。今まで,社内では駐輪対策と言っていたが,駐輪政策ワーキングと名称を変えて,社内での相談の場を作った。
枚方市の駅前広場は以前,無法地帯で放置と廃棄でひどい状態であった。枚方市が管理している区域は毎日撤去に来ているが,京阪の管理地は撤去されない。民地は撤去に来ないことを皆よく知っている。勝手に撤去して文句,苦情があったら誰が対応するのかということで,手を付けなかった。ほっておくことによるデメリット,苦情に対応するというデメリット,まともに歩けない状況,京阪の駅はひどい状態だと思われることなど考えて,思い切った考えをすることにした。平成17年の夏に100台を近くの保管スペースに撤去し2週間預かった。引取りに来たのは2件だけ。
・JR高槻駅でのうまくいっている事例を参考にした。駅前の店舗前に機械式駐輪施設が設置され2時間無料とされていた。整備されるときっちりと停める習慣ができ,放置をする人が減った。うまくいかなかったことは,周辺の駐輪場と同じ値段の1日200円としたところ,駐輪する人が多すぎて駐輪場が足りなくなり,逆に周辺の駐輪場利用者が減った。
・高槻の事例を参考に,短時間利用者は駅前に停めてもらうということで,90分まで無料,90分を超えると200円にした。枚方市駅近辺の一時預かりは150円で50円安いので,長時間利用者は周辺の駐輪場に停めるだろうと考えた。しかし,ふたを開けると,200円くらいなら近いほうがよいと,たくさんの人が停めに来て収容台数が足りなくなった。そのため今年4月に値上げをした。我々のシステムのよいところは利用状況を見ながら値段を変えることができる。
枚方市の管理区域,ビオルネの管理区域がありそれぞれが駐輪場をもっているが,考え方を統一しようということで,枚方市が中心となって協議会を立ち上げ,料金は異なるが意思統一をしている。
・整備する前は人が通れなかった通路も,真ん中が通路として空いている。バイク,原付も多いので社有地で駐輪場を増設した。
・機械式駐輪場は収容台数171台で,有料利用,無料利用合わせて2.5回転くらいしている。圧倒的に30分以下の利用が多い。コンビニなど短時間での買い物の人は,お金を取ったら駐輪場に置かない。無料にしてルールだけは守ってほしいと考える。
・京阪,枚方市,ビオルネなどで平成16年度以降1000台分を整備した。その結果,駅周辺の放置台数は1300台程度だったものが,300台に減少した。ほぼ整備した台数と同数である。
・他のうまくいった事例として,以前,三条〜五条間には駐輪場がなく放置も多かった。駐輪場用地もない状況であったが,市や地元との議論の中で鴨東駐車場の横の緑地を利用できることになった。建仁寺垣を使うなど風情もあり,見た目にもきれいな駐輪場になり,自転車131台,原付43台が収容できる。最初の60分を無料としている。当初は利用も少なかったが,地元,警察の協力で夜間撤去を行い,駐輪場利用の啓発を行い,今ではバイクは満杯,自転車もほぼ収容台数に達している。祇園四条の駐輪場の特徴として,利用時間のピークが夜7時ころから増えてくるということである。繁華街に近いということからであると考えられる。駐輪場整備を機会に祇園商店街ともつながりが出来,商店街でのぼりやポスターなど掲示してもらったり今後の連携につながった。
出町柳も駅近くに放置が多かったが,19年9月に200台を増設し,通勤通学の長期利用の月極めの増加を図った。三条駅も一般利用できる駐輪場を自転車62台,原付21台分整備したが,利用者が多く今年9月に原付25台分を増設した。
中書島では平成16年に711台分を整備し,通勤通学の利用者が多くなっているが,常に100人が順番待ちということで,平成18年に京都市から土地を借りて131台分を増設した。整備後は放置が半数に減少した。
・料金体系について,寝屋川駅のフレスト前通路に64台の機械式駐輪場を整備した。店に来る人の利便性を図るものであるが,64台分しかなく,駅直下で便利なところであり,長時間利用でなく短時間のみで利用してほしいということで,思い切った料金体系にした。最初の1時間無料,以後8時間ごとに300ずつ加算されていく。利用時間の台数はねらいどおりとなった。
・寝屋川の駅から少し離れたところにある駐輪場は長時間の利用にも対応し,自転車150円,原付250円という普通の料金としたが,利用者が多いので,他の駐輪場に迷惑とならないよう値上げをした。
・樟葉の駅前も放置がひどい状態であったので,164台の駐輪場を整備した。短時間利用向けとし,6時間まで100円,12時間で200円,通勤で12時間以上は300円という料金にした。利用は短時間利用者が多いが中には長時間利用者もある。樟葉駅の周りにも駐輪場はたくさんあるが,駅に近い場所であれば,少々高くても利用する人がいる。
・次に丹波橋を考えている。京都市丹波橋の駐輪場は無料であり,管理費用がないため,無茶苦茶に置かれて,捨てられている自転車などもあり,駐輪スペースを占領しているため,利用する人の自転車があふれ出してしまう。無料であれば,歩いて駅に来れる人でも自転車を利用する。今年度末には整備をしていきたい。
・他にも何箇所か京都市との連携で進めて駐輪場整備を進めていきたいと考えている。


4 コアメンバーからの意見・提案[その2]
○ユーザーや需要に応じた対応は役所では出来ていないところである。うまくいった事例の紹介のなかで,放置されていた自転車はどこへいったのか。
○放置自転車はゼロにならない。おそらくより撤去のゆるいところへ逃げている可能性はある。しかし,収容場所を作って追い込みをかければ,間違いなく放置は減る。枚方のように10分の1になるところや半数しか減らないところもあるが,やらないよりやったほうが,少しずつでも放置が減り,トータル的にはプラスになる。
○失敗事例として,四条の駐輪場はバイクより自転車の収容台数を多くしたが,実際はバイクの利用者が大変多くなった。その経験から三条の駐輪場はバイクを多くしたが,三条は逆に自転車の利用者のほうが多いということになり,ニーズを読むのが大変難しい。
○料金設定について,市の駐輪場では都心部も周辺部でも同じ料金となっており,臨機応変ではない。ニーズに合った料金体系,利用形態に応じた料金体系,近隣の民間駐輪場の料金も参考にしながら考えていきたい。無料の駐輪場は丹波橋や藤森にあるが,有料化を図って,ニーズに合った台数を確保していきたい。丹波橋は現在250台の無料駐輪場であるが,最終的に500台くらいを整備したい。管理の行き届いた有料駐輪場を整備していきたい。京阪七条や東福寺の駐輪場も同じ。
○四条の駐輪場整備については,緑地帯に作るということで地域からの反対があった。これに対しては,地元の住民に反対者を説得してもらい,地元の団体から要望書をあげてもらった。丹波橋についても地元の団体から要望書をいただいている。これからは要望書をいただいたところから駐輪場整備を行っていく。京都市がやらせてくださいというのではなく,地元の要望を受けて,地元と一緒に放置自転車対策に取り組んでいきたい。区役所が前面に出て地域の実情に応じた取組ができればよい。
○行政の立場を聞いていると,駐輪場は無料がよいという意見も多い
○100円,200円でも駐輪代を払いたくないので,今までは放置もしていた。放置をしていると盗まれたり,傷つけられたりするので,お金を払って預けることで,傷をつけられず守りますというプラスのイメージの発想の転換が必要である。
○90分無料などとしているのは,地域への貢献で大変よい。有料の場合利用に戸惑う。1時間無料ならきびしいが,2時間無料なら利用する。
○料金体系を短時間無料にしているのはニーズに合わせているのですばらしい。原付も使っているが,違反をとられるので駐輪場に停めている。無料のほうがありがたいが,撤去がきびしくなれば駐輪場に停めたほうがよい。
○原付も利用しているが,市街地には停めるところが少ない。原付の駐輪場を整備してもらうのはありがたい。原付の駐輪ならお金を払ってもよいかなと思うが,自転車だと払う気にならない。
○JR西大路駅前の駐輪場整備では,ワコールなどが駅前のイメージと企業イメージを結びつけて,企業が積極的に取り組んでいた。京阪の次の展開として,駅周辺の商業施設との連携で,店や駐輪場がピタパで決済でき,駐輪料金がただになるなどのインセンティブが与えられるなど,いろんな展開へのきっかけとして駐輪場整備をされるならすばらしい。
○きれいに整備された写真をご紹介いただいたが,三条通北側の歩道は車いすが通れないほどひどい状況であり,四条通は自転車通行不可である。三条,四条,出町などの駐輪場整備に当たっては,何らかの迷惑駐輪の統計調査などされたのか。
○いろいろな種類の駐輪場があり,駅前に大型駐輪場,街中に簡易駐輪場など
○四条も三条も焼け石に水ということはよくわかっている。成功すれば,自動車のコインパーキングをしている人などもこれもよいなと思ってもらえるかもしれない。焼け石に水でもとにかく1回やってみないと始まらない。必要台数が全然足りないのはわかっている。四条でもラックの隙間に停めてるのもあり,三条に整備したが流れてこないということもある。これをゴールと思ってないし,まず出来ることから始めている。ちょっとずつ階段を上っていくうちのまだ2〜3段である。
○京阪でこんなに駐輪場整備がされているということは知らなかった。京都は全国のメディアから自転車文化が発達している街であると思われている。もっとメディアを活用して発表していったらよいのでは。駐輪場については,料金が高くても安全に駐輪したいので設置してもらえるとありがたい。
○京都の外から来た人から見ると,放置自転車の多さにびっくりする。マナーが悪いとか,違法駐輪が多いということで,街のイメージダウンである。
○街中の自動車の総量の問題は難しいが,自転車についてもどのくらい街中で使えるのか議論する必要がある。