第7回のダイジェスト(2)

■プレゼンテーション2
「さまざまな自転車カルチャーが存在する街・京都」
谷本 新(店舗企画・広報・コンサルタント
沢田 眉香子(フリーの編集・著述業)
竹中 聡(月刊「京都CF!」編集長)

(谷本氏)
・資料の表紙の絵。歩行者が信号を無視して渡っていて,自転車と車が事故って車が怒っているというまさに京都の交通事情にぴったりの絵である。
・子どもの頃から自転車が大好きで色を替えたり,パーツを替えたりで改造を楽しんでいた。
・20歳のときに雑誌がきっかけで所ジョージさんの目にとまり,これがきっかけで本格的にカスタムをするようになった。大学のときに自転車好きの友人と「cyclove508」というカスタム自転車クラブを結成。2002年に「こちゃり部TSUBAME」を結成。女の子中心の自転車クラブでファッション的な視点からかわいくておしゃれな自転車に乗りたいということを実践。
・フジサイクルのタンデム。2人乗り。公道で2人で乗れない。
 60〜70年代のラレー。ダークなカラーリング
 20歳のときの自転車。花柄に凝っていた。4色の花柄を4回マスキングして塗装した。タイヤとホイールも換えている。
 みかんと名づけた今乗っている自転車。マンションの駐輪場が狭いので部屋にもって上っている。京都の街を移動する際にはこれで十分である。
・カスタムをしていると,雑誌から取材依頼が来るようになった。「Lightning」で今年の夏に「チャリカスタム俺の流儀」でカスタムは楽しいという提案をした。
「自転車人」という雑誌で自転車に関係のある人ということで掲載された。持っている自転車を全部載せた。
・自宅にはすぐ乗れる自転車が17台ある。住宅情報誌の記事ではこんな変わった人がいますという感じの取材であった。
・雑誌の仕事が来るようになった。2001年の「Meets」。変わった自転車に乗っている友人を紹介した。
・本日来ている沢田さんが編集長をされていた雑誌の自転車特集の記事。カスタムアーチストとして紹介された。クリティカル・マス,実用車の特集,ライダーの自転車をカスタムしてかっこよくする企画,カスタムの工程,パーツ紹介,ヘルメット,ウェアなどアイテム紹介。
 今では当たり前であるが,当時は自転車雑誌でない雑誌にこういう特集は画期的な企画であった。
・このような活動をしているうちに,いろんな濃い自転車好きの方と出会った。タクヤさんは京都で一番の自転車好きで京都の自転車カルチャーにこの人ありというほど全国的に知られた人である。
 タクヤさんは現在,自転車映画祭というイベントに力を入れておられる。これは自転車に関する映画や映像を世界から集めて紹介しようというイベントである。
タクヤさんと97年にクリティカル・マスというサイクリストによる市民運動を始めた。これは1992年にサンフランシスコで始まった。日本では京都が最初であった。京都大学で交通問題を研究している小山さんという方が始めた。当初は告知もなしに車道の真ん中を一人で走っているという状況であったが,せっかくの運動だということでタクヤさんが発起人となり97年8月に正式に立ち上げた。やり方について研究を行い,その年末に行ったライドが日本で初めてのクリティカル・ライドとなった。半年遅れて東京でも行われた。大阪,神戸,名古屋にも運動を広げて全国規模の運動となった。
 自転車通行禁止に抗議して四条通をふさいで走っている。旗には道路を共有しようというメッセージ。環境問題,交通問題,自転車好きの人いろんな思いの人が参加した。テレビに出演してPRもした。
・しかしながら,四条通などの走行は非合法であり,規模が大きくなるにつれて車とのトラブルも多発。ゲリラ的な活動に限界を感じはじめた。
 何か情報発信する拠点が必要である。2000年10月15日に世界初のクリティカル・マスのカフェが誕生した。
 カフェ・ルゴール。自転車に特化した店作り。入口を1.5mセットバックして駐輪スペース設置,自転車スタンド設置,自転車をキーワードにしたイベント,アート作家とのコラボによる展覧会の開催。
 おしゃれ系カフェとしては,おそらく京都で初めてのバリアフリーカフェ。バリアフリーをおしゃれに見せることで普及につながればと思った。さまざまな雑誌に取り上げられた。オープンして2年で150くらいの本から取材を受けた。社会的な注目,新聞にも取り上げられた。
・ルゴールの新たな試みとして,お客様サービスの一環でレンタサイクルを始めた。食事の後に利用してもらおうというもの。カフェなので深夜でも返却できる。カフェっぽい感じのかわいい自転車。サドル,グリップもおしゃれなものに替えている。ズボン,スカート巻き込み防止のガードを特注で作っている。
・提案として,将来的にレンタサイクルをするカフェが増えたら,いくつかの店で連携して駐輪スペースを提供しあうようなことができれば理想的なレンタサイクルのシステムが出来上がるのではないか。
 全てを行政や他人任せにしてしまうのではなく,個人レベルでもできることがあるはず。自分のできることから始めていくことが大事なのでは。
・やってきたことが必ずしもよかったとは思っていないが,少なくとも何かを変えなければと思ってこれまで活動してきた。飲食業者であるが,そういう活動のお陰でメディアにも注目していただき,取材してもらえるきっかけとなった。
 京都のまちには個人レベルで活動している人間がたくさんいる。ひとくくりに自転車といっても様々なジャンルで活動している人間がいるということを知ってほしい。そういう人々の活動によって自転車文化が育っていることを誇りに思ってほしい。
 自転車環境が整ったまちというには,駐輪場や走行環境などのハード整備は大事であるが,箱物だけを整えても,そこに住む人間が伴わなければ本当の意味での自転車都市にはならない。文化を熟成させないと全国から注目されない。

(沢田氏)
・15年前に京都に引っ越してきた。一番ショックだったのが自転車カルチャー。実用車に乗った魚屋さんなど自転車のまちという印象。2001年のLマガジンで特集をした。普通の情報誌でまるごと一冊特集するなどあまりないこと。しかし,売れずに大阪と京都での意識が違うと実感した。 
・折りたたみ式自転車を買って京阪電車で京都,大阪を行き来し,自転車に乗っている。自転車に乗ろうという地道な宣伝活動。
・京都の自転車に対する注目度は東京の媒体でも高まっている。女性誌での自転車観光やレンタサイクルの情報を掲載することがいわれる。タクシーより自分の足で見たいという欲求がある。東京でも京都に遅れること10年でおしゃれ自転車がブームである。
・京都は文化が生まれる場所である。なぜなら自転車都市であるから。学生が自転車に乗って研究室やアトリエに移動できる。自転車で移動できるコンパクトなまちで,24時間アトリエに往き来するのに,自転車が重要な役割を果たしている。夜10時の百万遍はママチャリの学生がガンガン自転車で往き来している。これが京都,文化が生まれるまちである。
京都市へのお願い。若者文化の大動脈である自転車を撤去しないでほしい。有料駐輪場もできているが,若者はお金がない。自由に停められるまちづくりをしてくれないと若者文化が衰退していく。

(竹中氏)
・京都CFは総合情報誌。9月に自転車の特集を行った。京都にどんなウェーブが来ているのか,毎月の取材でいろんな情報が入ってくる。自転車特集は,医療で言うと対症療法で,何か動きがないとしない。自転車は少しそのようなにおいがあった。
・最近になって,居酒屋とか美容室の人がいい自転車に乗っている。特集する機が熟したか。自転車をどう取り上げるか。消費情報を出して消費を促し,経済効果を生む。しかしそれだけではだめ。京都の自転車カルチャーは高い。まちと付き合っていると自転車についてわかってくる。
・まち中の有名な旅館のお上さんに,自転車何とかしてほしいといわれた。京都は国際都市である。オランダ人の宿泊客が,自転車に殺されかけたと言っていたということである。京都はオランダほど自転車に対するルールがなっていない。これは言わないといけない。消費にはつながらないが,メディアの役割として伝えていく必要がある。総合情報誌であるから,オブザーバーのような感じでこんな話,あんな話を聞いて,みんな自転車に乗っているということを伝えるのが仕事であるということで9月に出した。
・結局これが消費を促す。自転車に乗りましょう,買いましょう,ルールを忘れず乗りましょう。我々が作っているのは流行やブーム。これが成熟してカルチャーとなる。我々の役目としてこれからもことあることに自転車に触れていく。
・メディアとしての功罪もある。広めていく反面,偏った紹介のされ方をしている。高額でハイスペックなものに偏っている。ハイスペックなのもを乗りこなす技量,熟練がないから事故が起こる。これが弊害である。
・何が必要か。2つ。道路交通法を根本的に変える必要。現在は弱者保護になっている。根本的に変えないと自転車に安心して乗れない。法律が変わると保険が変わる。自動車保険が変わるとシステムも変わる。信号無視をして引かれても文句が言えなくなる。
 京都は職人のまちである。乗りたい自転車がないということであったが,谷本さんの自転車は乗りたいと思うのではないか。こういう人たちが作りやすいサポートが必要である。一人の職人からカルチャーが生まれる。
・ウイルスの話が出たが,これが強いことを祈りたい。自転車については生命力の強いウイルスであることを期待する。

(谷本氏)
・メディアも京都の自転車シーンに注目している。京都市もこれを利用しない手はない。広報に役立ててほしい。自転車政策課での活動もメディアを使って広げてもらいたい。

■コアメンバーからの意見・提案[その2]
○京都はなぜ自転車文化のメッカなのか。まちに特性があるのか。谷本さんのような人がいるからなのか。
○移動距離が短いという立地,学生が多い,アート系の学校など自転車カルチャーが育ちやすい環境。タクヤさんのような人の存在。ベロタクシーメッセンジャーができたのも彼の存在が大きい。彼を軸にしたキーパーソンが情報交換するという狭いコミュニティがあるのも自転車文化が育まれたきっかけである。
ゆとり教育を受けた人は自転車に乗る人が多い。文部科学省ゆとり教育で自転車型の教育というのがある。これを受けた人は将来みんな自転車に乗り出す。そこで京都市へのお願いで,それまでに自転車道を整備してほしい。駐輪場もあちこちに増やしてほしい。がんばって自転車都市を作ってください。
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山崎副市長
セッションも最終回となりまとめをしなければなりません。年明けに何度か集まる機会をもって,京都市京都市長への提言として意見をまとめたいと思います。半年にわたるご協力ありがとうございました。傍聴の方もお寒い中ありがとうございました。7回にわたったセッションを終了させていただきます。