第7回のダイジェスト

■プレゼンテーション 
「おしゃれな自転車環境」赤城夫婦(作家)

・ファッションビジネに10年以上かかわった関係から,口コミということと一緒に考えていく。
シャンパンタワーの法則。これまでのセッションの中で自転車の高単価化をしないと放置自転車が発生したり,自転車への愛着を感じないということであった。一番上が自転車への愛着ということで,愛着の湧くような自転車なら女性の間で口コミが起こる。そして環境整備,法整備があり,それが習慣化,文化になっていく。環境整備,法整備は専門の方がお話されたので,上の部分で自転車への愛着,口コミがどのように起こるのかについてお話したい。
・自転車に関する本音で,このセッションに出て途中から肩身の狭い気持ちになった。高い自転車を大事に使っていこうということであったが,高くてもほしい自転車がない。高い自転車なら違法駐輪がなくなるということであるが,ほしい自転車がないから,1万円くらいで実用的なもので十分かと思ってしまう。
・どんな自転車がほしいか。世界に愛される「カワイイ」が表現された自転車がない。スポーティ過ぎる。シンプル,地味,実用的過ぎる。特別感がないなど高い単価を払ってでもほしいものがない。
・「カワイイ」ってどんなことか。キラキラ,リボン,コサージュ,キャラクター,縮小化,カラフル,セクシーなど,日本文化独自の世界の人々から注目されているものがパーツやデザインに組み込まれたものがない。
・「カワイイ」の導入で新たに活性化しているスポーツ市場として,乗馬とゴルフにおけるアメリカの市場。ピンク色の乗馬服やショートパンツ,ゴルフウェアでもミニスカートやショートパンツ,キラキラのボールやキティちゃんのピンなど。
・ゴルフ雑誌の場合,従来は本格的な感じであったが,「カワイイ」というのは格好から入るので,ファッション雑誌と同じような表紙や商品になる。
・自転車にこういう雑誌があるか。エコ過ぎる。シンプルで地味。マニアック,スポーティ過ぎる,可愛くない,セクシーでもない。特別感がないのでお金を掛けようというものがない。
・「カワイイ」が作った新しい市場。ネイル,デコ,姫文化,ゴスロリ,パンスト
・タイツ市場,アート,東京カワイイTV,雑誌「カワイイ」,「小悪魔ageha」など。従来の浴衣とは全く違う発想の浴衣など,海外からも買いに来ている
・ 世界から愛される「カワイイ」文化として有名なのはデコ電。あとデコデジカメ,デコipod,デコ名刺入れ,デコペン,デコ鏡キラキラしたものが波及している。
・ 世界中のヒットも「カワイイ」がベースになってヒットしているものがある。映画の興行収入コメディ部門で1位となった「SEX AND THE CITY」。その他世界中で支持される「カワイイ」として「キューティブロンド」という映画がある。関連グッズもいろんな物がたくさん売れた。
・ウォルトディズニーの映画でお姫様が出てくるもの,ヘアスプレーでもキラキラしたもの,花王は「かわいいをつくる.com」を持っている。
・「カワイイ」好きの有名人。浜崎あゆみ,キャメロンディアス,パリス・ヒルトン,パトリシア
・愛着度とは,高単価化することが必要であると,このセッションでも何回か出てきた。撤去されても取りに行かない,放置してもまあいいかと思わないような高単価の自転車でなければ愛着が湧かない。しかしながら,高単価の自転車はスポーティで本格的過ぎる。愛着をどうやって増やしていくか。高単価である,カスタマイズ化,手作りが出来る,自己表現のツールだけでなく,ファッションの一部になる必要がある。ファッションの一部になると新しい市場が誕生する,新しい市場が誕生すると新しいテクノロジーが誕生する。
・実際に起こった事例としてネイルの場合。普通の爪は0円だったのが,ネイルを塗るということで100円〜3000円かかるようになる。さらに自分で手入れ,デコレーションすることで1000円〜1万円がかかり,サロンでするようになると1万円〜5万円がかかる。0円から毎月,個人が数万円使う新しい市場が誕生。さらに,スカルプチャーやジェルネイルなど新しいテクノロジーが誕生する。スクールが創立され,認定制度化される。定期的にイベントが開催され,専門雑誌が発売され,口コミがどんどん広がって新しい文化,市場が根付いていく。
・愛用者も芸能人,モデル,女子プロ,女子高生,女子大生,OL,主婦まで。
・市場の拡大化・多様化で男性市場もできている。個人サロンから全国チェーン,海外チェーン,美容室,エステサロンでの併設など多様化してきている。ネイルが常識化している。
・ネイルに関連するものとして,下地,トップコート,ハンドクリーム、爪やすり,キューティクルを保護するもの,乾燥機やクリップ,パウダーなど関連する新しい商品もできた。
・なぜ自転車には「カワイイ」がないのか。かわいい商品を探してみたがなかった。キラキラした自転車など見たことがない。ラインストーン,リボン,コサージュ,パール,バタフライ・テディベア,セクシー,モチーフ,カラーバリエーションでカスタマイズできる自転車は見たことがない。
・自転車のタイヤやボディがキラキラだったらというイメージであるが,自転車はパーツが大きいので大きいラインストーンが必要であったり,専用の器具が必要であるから誰もする人がいない。パイプの部分も丸くなっていてラインストーンがうまく付かないので,デザインを変えることが必要である。メーターやライト,ハンドルをデコしてもよい。
・色に関しても,カラフルで遊び心があってもよい。ハンドルにレースがつけられるなどロマンティックな自転車もない。
・カスタマイズできる自転車も本格的なものしかない。パールやリボンが付けられるものがない。ちょっとゴージャスな自転車も見当たらない。金や黒など取り入れたシックな,気持ちゴージャスな自転車があってもよい。ちょっとセクシーなものも。これまでスポーティなウェアしかなかった。タイヤをカラフルにするなど,形から入ってもよいのでは。
・順番として,カワイイ自転車なら高くてもOKという発想。そして口コミが起こる。カワイイ駐輪場なら停めたくなる。新しい文化が男性へも浸透していく。日本の男性もカワイイが好きである。
・口コミが起こる条件とは,タブー,一風変わったこと,突飛なこと,おもしろおかしいこと,ずば抜けていること,秘密など。
・自転車環境について,駐輪場や道路をどうするかについて話が出たが,関心を持ちたくなるとか,口コミが起こる土壌がない。一風変わっていたり,突飛であったり,おもしろおかしいものなどがない。
・カワイイ駐輪場とは,カラフルな駐輪場,デコレーションされた駐輪場,アニメやキャラクター化された駐輪場。上からアニメのキャラクターがぶら下がっていると子どもは喜んで停めに来る。カラフルな駐輪場は犯罪の抑止力になる。新しい,風変わりな,突飛な駐輪場であれば口コミが起こり,ニュースになる。そして観光名所になるような駐輪場になる。
・結論として,新しいニーズに応える。新しい発想で,新しい商品を作る。新しい市場ができれば,新しい文化ができる。日本発の「カワイイ」を普及していってはどうか。
マインドマップ。自転車は観光客や買い物客に便利。スタンプを貯めてドリンクがもらえる,ポイントをためて動物園などに入れる,神社仏閣のお守りが安く買えるなど,口コミを広げるには,ブログやホームページで書きたくなるようなネタを提供することが必要。

■コアメンバーからの意見・提案[その1]
○世界的に自転車は実用的な乗り物として使われている。日本では実用性を追及するあまり,自転車の大きさは幅60cm,長さ190cmというように法律で規定されている。他国では2人乗りの実用性と遊びを兼ねた自転車が乗られている。自転車の認識を高める上で,女性,若い人,高齢者は男性よりも高い力があるかもしれない。
○実用的でなくなるとまずい。生活できないとだめである。ベルをダイヤモンドのクリスタルカットにしたり,ハンドルがもこもこして暖かいとか,車輪にカバーのようなものをつけて回ると違う感じになるとか,個人的にそんな自転車ならほしい。
○アニメ好きな人が,ロボットの絵などを書いているのがサブカルチャーとして東京から出てきている。
○子ども向けではなく,子どもっぽくならない大人向けの,大人っぽいけどかわいいというのがあればよい。例えばピンクの自転車なら全部ピンクでなく,黒とかパープルを取り入れて,大人っぽいがかわいいという自転車。世界で見たことがないので,日本で作れば海外にも売れるかも。
○19世紀中期に自転車の原型が出てきた。イギリスのローバーが設計をした。一番最初に設計されたものが強度,乗り心地もベストとされている。日本のママチャリはまたぎやすいということで画期的であった。パリのレンタサイクルもママチャリをまねている。
○はじめは人の気を引いても,長く使われるものとかすたれないものは本質的によさがある。京都は古いものとか伝統を大事にする文化がある。新しいものの中に,本質的なもの,ぱっと見は華やかで人目を引くが,使っていくうちにいいなと思われるようなものが生まれたらおもしろい。
○学生の間ではミニバイクのシェアが高い。デザインがカワイイものがありカワイイ系の女の子は乗っているが,長い距離は走らない。自分がここまで自転車で来るというと驚かれる。彼女たちに長い時間乗ってもらえるような自転車が必要である。
○ゆかたが復活したのも従来の着方をくずしたことによる。新京極界隈のレトロ系の着物屋も従来のものでなく,洋服っぽい,レトロモダンな感じになっている。京都風といっても古典そのままでなく,わびさびだと地味になってしまう。デートで駐輪場を待ち合わせ場所にしてもよいというような駐輪場になればよい。和の柄を使うにも色を使うとかわいい。
○青天井の簡易型の駐輪場なら,ラックにカワイイが必要。色などをポップでカワイイものにする。天井のある駐輪場ならお寺のような天井画やラックの番号のデザイン,ラック正面の壁をわびさびや生け花するなど,きれいだな,ちゃんと使おうというものがあればよい。わざわざでもそこに行きたいというものが必要。
○美容室のカリスマ美容師に300人の客がついていた。客の中にひめというリーダーがいて友人を連れてきて300人の客がついた。イケていない女の子がつけているカワイイ時計でもひめがつけると,途端にやはり出す。情報発信の役割を果たしている。主婦の中にもひめがいて,おしゃれやカワイイについてアンテナを張っていて,話題性があると口コミが起こる。
○ピンク色やキラキラだけがカワイイ,かっこいい訳ではない。いろんなかっこいいがある。当たり前のものから飛びぬける必要がある。ママチャリや駐輪場は当たり前過ぎる。飾られてもないのに窓が丸くなっていたり,中間色であったり,中途半端である。受け入れざるを得ないというのがいいとは思わない。もっと尖がったものが出てくればよい。当たり前の範囲が広がる。もっとましなものが役所でもできる。メーカーも尖がったものを勇気をもって作ればよいが,大メーカーにはできない。
○ハリウッドの有名人の家を巡るバスツアーのように,京都の駐輪場を見に行くバスツアーができるくらいの駐輪場。ライブハウスの近くならへヴィメタの聖地のような駐輪場,お茶お花などの文化,アニメなどあえてでもそこに行きたいと思うような駐輪場。
自転車神社のようなものを駐輪場に祭って,何とか参りで毎月巡るとか赤い提灯を飾ったりというイメージ。
○尖ったことが大メーカーにできないなら,大会社の京都市にお願いすることになるのか。カワイイ自転車は誰が作るのか。一時期自転車がはやったときにプジョーの自転車に乗っていた友人がいるが,かっこいい感じの自転車が広がればよい。天井からアンパンマンがぶら下がっているような駐輪場は,商標の問題もあり,京都市がやるのは難しいかもしれない。民間が参入しなければならない。民間の駐輪場が1時間300円でアンパンマンがあるという横で,違法駐輪があって撤去されていなければだめなので,このような産業を盛り立てるのと同時に,盛り立てる環境整備を公共でしっかりやることが重要である。
○女性はスカートで自転車に乗れないし,浴衣でも乗れない。京都ならではのソリューションができたらおもしろい。
○今自転車に乗っていない人たちに自転車に乗ってもらう,新しく市場に参入してもらう。そのためにカワイイ自転車を作る。メディアや口コミを起こす人が食いつきたくなるような面白さ,かわいさ。京都は伝統と新しさが一緒になっている。トップカルチャーのコンテンツもパワフルで影響力がある。これからの100年で新しい文化をつくる,京都が発信源になればよい。
○京都で何百年も栄えている店が,新しい店を増やさないのは,待たせる喜びをお客さんに提供するということを聞いた。これが京都商人,文化なのだと痛感した。新しく自転車の文化,自転車を通じて京都を再認識するきっかけにこのセッションがなればよい。