第5回セッション ダイジェスト(2)

chari-kyoto2008-11-20


■プレゼンテーション
「商店街による民間駐輪場整備」
中川 大(京都大学大学院工学研究科教授)
・商店街による民間駐輪場整備ということで,ロックン広場に商店街の皆さんが,がんばって駐輪場を作ってくれた。市民の協力によって,都心部の自転車問題を解決したいという思いで,違法駐輪が多かったロックン広場の一角に駐輪場ができた。
 これまでのきまりでは,路上に駐輪場を作るのは難しかったが,規則など新しくなって,京都市や府警と相談して実現に至った。
・京都の都心部の路上駐輪は6000台〜8000台となっており,何台分の駐輪場を作れば解決するか。
都心部への流入交通量はパーソントリップ調査で1日338,300トリップとなっている。そのうち自転車は,48,400トリップで14.3%,7分の1を占めている。
・48,400トリップのうち,6000〜8000台が違法駐輪であるが,これは中間的な数字なので,何回か回転していることも考えると15,000台くらいの違法駐輪の可能性はある。
・しかし,相当多数の人は,有料駐輪場,自宅,商店の駐輪場などにちゃんと停めていることになる。流入交通量は外からの人だけでなく,中の人が外から戻ってくるのも含めた数字である。
京都市全体の自転車利用率は21.6%。都心部での利用率は7.3%なのでこの数字は相当低い。本当は自転車で来たいが停めるところがないので,別の手段で来ている人が相当いると考えられる。
・厳密に数字は出せないが,京都市の一般的な率の21.6%と同じ率でいくと,ざっと24,700人の人が,本当は自転車で都心に来たいと考えているがしていない。都心では相当多数の潜在的な需要があると言える。
・何台分の駐輪場が必要かとなると,違法駐輪が6000〜8000台なので,8000台分と,24,700人の潜在的需要があるので,2回転するとして,12,350台分の合計,20,000台が収容できる駐輪場が必要である。
・市のアクションプログラムでは都心部に2,500台の駐輪場設置になっているが,全部できても20,000台には遠く及ばない。都心部に少しでも駐輪場を作っていくほうがよいように見えるが,焼け石に水である。現状のやり方では火に油である。自転車で来たい人は数万台あり,潜在的需要を引き起こすことになる。都心部は自転車で行きにくいから遠慮している人が相当いるということを知っておかなければならない。
・むやみに何かを作ってどうぞ来て下さいというのでは,火に油の可能性がある。
・現状のやり方について,市営駐輪場は現在1日1回150円,1ヶ月定期2,700円の料金である。市バスは往復440円,1ヶ月定期9,240円である。都心部でこの価格でどんどん駐輪場を作れば,ますます高い公共交通から自転車への転換が進む。バス,地下鉄から安い駐輪場を選ぼうかという人をどんどん増やすことになる。
・駐輪場利用料金も定額制で1日1回150円である。これは長く使えば使うほど得だということになる。2時間停める人も12時間停める人も同じ料金。長々と占有してくださいと言っているようなもの。1台の施設を1日ひとりの人が使うだけになってしまう。
・ロックン広場では最初の3時間は100円,最初の30分だけなら50円,3時間以後,30分ごとに50円としている。8時間で600円になり,これだと長時間駐輪する人はいない。これは,長時間の人はバスで来て下さい,都心の空間を長々と占有することがない行動をしてほしいというメッセージを含んでいる。
・2万台必要なところに,1日2,500台しか停められないのでは焼け石に水であるが,2,500台分が3回転,4回転もするようになると,かなりの人の受け皿になる。長く停める人は別の手段で来て下さいということになると,解決の方向も見えてくる。
・ロックン広場はたくさんの人に利用してもらっている。駐車料金を支払って多くの人が利用している。ちゃんとお金を払って停めてくれる人が相当たくさんいるということがわかったことは,最大の成果である。
・違法駐輪は相変わらずし放題であるが,撤去保管費用を払うことの推定期待値は,多く見積もって2時間12円程度である。ロックン広場で2時間100円,市営駐輪場で2時間150円で,違法駐輪の方がコストが低く,駐輪場に行く気にならない。
・市営駐輪場は同じ料金体系でやっているが,問題解決に向かって進んでいない。焼け石に水であってほしいと願ったが,我々の努力は徒労であった。違法駐輪の対応や市営駐輪場の運営についてこれまでと違う方向で動くかと思ったが,期待はずれで,時間の無駄であった。
・結論として,ただで置き放題の世の中において,ちゃんと停めてくれている人たちに対してただただ感謝をしたい,というのが率直な気持ちである。
 問題解決がしていない,期待すべきことを読み違えていた,失敗だったと言えることに対して,救いとなっているのは,まじめにちゃんと停めてくださる人々である。今日もたくさんの人がロックン広場の駐輪場を利用している。期待値が10円で違法駐輪できるところがたくさんある中で,ちゃんと停めてくださる方にただただ感謝をしなければならない。
 駐輪場を作ることが目的ではなく,都心の問題を解決したい,動きたいということであるが,それに対してはまだまだであると感じている。

■コアメンバーからの意見・提案[その2]
○青空駐車は12円程度で停められるが,いたずらされるなどのリスクを考えるとやはり,駐輪場に停めようと思う。
○運営方法について,ロックンプラザは,駐輪施設として使っているが,街中の商店で運営の組織を作って,全体的なマネジメントを行っている。
○ロックンプラザは,2回転,3回転の稼働率ということで,付近の違法駐輪を防いでいる。地域や商店街が中心にやってこられたことに敬服する。
○料金体系について,駅での駐輪で通勤や通学で8〜10時間駐輪する料金と,都心部,商店街で利用時間が短い場合の利用料金を見直していく取組を進めている。市内全てを同じ料金にするということは,平等であるとも言えるが,実態に応じた利用料金,利用形態によって変化させていこうと考えている。
○駐輪場にボランタリィで駐輪する人は少ない。学生へのアンケートでなぜ駐輪場に停めるかと聞いたところ,パンク被害や盗まれたなど痛い目に会って駐輪場を使うようになったとのことである。ロックンプラザは学生でも利用しやすい料金であるが,学生に対してどのように利用促進するか方法など教えてほしい。
○ロックンプラザは1〜2時間くらいの駐輪の人が多い。近くにある市営駐輪場は1時間無料でその後150円,ロックンプラザは3時間100円でそれから150円となる。映画で3時間以内の人,買い物や周遊する人など用途に応じてどちらを使うか選択している。
○利用の促進として,チラシを作って啓蒙,広報をしている。ロックンプラザだけを使ってもらうことが目的ではなく,市営も含めて用途に応じて使い分けてもらうのがよい。学生の大多数もお金は払いたくないと考えているが,目指しているのは,秩序ある交通環境を作り出していくことで,対価を払ってでも駐輪するという人達の把握をしていきたい。
○駐輪場を整備することで,きちんと停めるという見た目の効果もある。ロックンプラザ近隣の商店街などの人々のプラスの評価はあるのか。
○広場はよくなっている。消防活動用のスペースも確保されて以前より活動しやすくなっている。新しい空間もできて,景観上も昔よりだいぶよくなっている。
○ロックンプラザに駐輪場ができる前から駐輪しているが,以前は六角広場に駐輪して戻ってくるととんでもないことになっていた。倒されたり,自転車の上に自転車が乗っているようなぼろぼろになっていた。駐輪場ができてからは,きれいに並んでいるし,駐輪自転車の間隔もあって傷がつくこともない。自転車を大切にしている者にとっては,お金の問題ではなくありがたい。
○自動車道を作れば作るほど車が増えていくのと同じで,駐輪場も作れば作るほど潜在的なユーザーの利用が増えてくるということである。最近,世界のいろんな都市でコミュニティサイクルが普及していきているが,駐輪対策が困難な中で,コミュニティサイクルが生かされる可能性はあるだろうか。
○たくさんの人が来ることで,都心の限られた空間が占有される。走行空間でも自転車が多くなると占有が発生する。
 ひとりの人が1台を乗っていると,乗っていないときには置いておかなければならず,たくさんの空間を占有することになる。時間的により多くの空間を占有しているのは駐輪である。
○ひとつの自転車をレンタサイクルで共有すると,一人が乗ってきては,また別の人が乗っていくということで,駐輪場が少なくて済み,合理的である。都心に来て買い回りなどいろんな場所を回りたい人が,相互に利用できる。同じ駐輪場に停まっている時間が少なくなり有効な方法である。
○都心に公共交通機関で来た人も利用したり,都心の周辺に自分の自転車を停めて,レンタサイクルを利用するなど,合理的でいい方法である。
○駐輪場は必要であるが,停められる場所ができればさらにたくさんの自転車が流入してくるという推定は悩ましいことである。ちょっとくらい駐輪場を作っても焼け石に水か悪ければ火に油を注ぐということである。もうすぐ御射山と新京極に更なる油を注ごうとしているが,本当に油を注ぐことになるのか,御射山ができた時点で判断しなければならない。現状がどうなのか,どうやって政策に反映させていくか。
○4万台の流入トリップがあって,8千台が放置になっている。あとはどこへ消えているのか。その人たちがとこに停めているのかを知ることでうまい解決策が出てくるのではないか。分散して駐輪するためのアイデアが潜んでいるのではないか。
○いくら駐輪場を作っても火に油というのは,4万台の問題ではなく,8千台の問題である。油を注いで8千台がさらに増加したら大変である。これが消えていった4万台にいくなら問題はない。いかに分散させるかを考えた方が効率的である。
○駐輪場を作っても無駄であるというより,作らずに解決する方法があるかもしれない。これがレンタサイクルにつながるかもしれない。パリの事例が日本に合うかは検証しないといけない。むしろ京都では,バス往復440円で駐輪なら150円で済むことが問題である。駐輪場の値段を上げて,その分バスを無料にすれば潜在的な需要も成立しなくなる。ここでもバス,自転車の優先順位の問題が出てくる。
○駐輪場を作るのは無駄ではなく,今のやり方であれば無駄であるという意味である。駐輪場を作るやり方や使い方を考えるならあった方がよい。
○時間の考え方は重要である。長い時間を停める人にはそれだけ長く公共の場所を提供することになる。潜在需要の中には,例えば四条河原町に停めて大阪へ電車で行くような人は含まれていない。これらを加えると何万という潜在需要になる。遠くへ行く人に駐輪場を提供するのはきりがない。
○せっかく作った駐輪場をいかに有効に使うかが重要。それを考えるのが最初なのに,現状ではそうなっていない。
○平成12年に総合計画を策定し,駐輪場整備と撤去という2大取組を行ってきた。その結果,市内全体で4割違法駐輪が減ったが,都心部では25%増えた。新たな取組としてアクションプログラムを策定し,富小路六角に530台,御射山に1041台,新京極に700台を予定しているが,計画の2500台には足りない。当初のアクションプログラムでは御射山を1270台としており,合計2500台としていた。
○プレゼンのときに賢い人間は違法駐輪をすると言ったが,撤去の推定期待値が12.8円ということが数値として出てきた。駐輪の問題は,青空駐輪と普通の駐輪場との戦いである。効用としてどのようにメリットがあるようにするか。これを考えないといけない。でなければ,ユーザーも使わないし,民間が駐輪場を作るにもビジネスモデルとして成り立たない。規則を守る人が損をするということで,青空駐輪場は総合的なシステムの中で考えていかなければならない。