第4回セッションのダイジェスト(1)

1 プレゼンテーション 
「みんなで楽しく自転車利用をインクルーシブデザイン」
塩瀬 隆之 氏(京都大学大学院情報学研究科助教
・本日のプレゼンテーションの流れ
  1 市民参加・ユーザー参加の甘い罠
  2 インクルーシブデザインとは何か
  3 みんなで楽しく自転車利用をインクルーシブデデザイン
・市民・ユーザーに届くはずの情報発信の怪
  届けたはず(つもり)だから読まないほうが悪い。
・市民参加型・ユーザー参加型の誤解
 「なにか意見があれば何でも言ってください。」と怖い顔で言われても。
・中途半端にしか届かない市民・ユーザーの声
  点字ブロックが必要というので取り付けたが,自転車が放置してある。
障害者トイレが必要というので設置したが,2階へ行くエレベーターがない,段差がある。
・なぜこうなるか?
 他人事,人事だから,具体的に解決されない。どこまでいってもその人の気持ちになれない。
・ 疑似体験をする。
 相手の立場に立ち,その人の気持ちになる。自分の問題として捉える。
 学校で総合学習の時間に取り入れているが,「車椅子は段差があると大変」とか「点字ブロックの上の自転車は見えない人に邪魔」という毎年同じ調査報告に終始してしまう。
 アイマスクや車椅子体験を子どもがすると,「かわいそう」,「たすけなければ」といった感想ばかりになる。解決につながらない。〜〜のためにというのは人事である。
・インクルーシブデザインでは,目の見えない人,車椅子の人や高齢者をデザイ
ンのプロセスに巻き込む。
・インクルーシブデザインワークショップの流れ
 できるだけ多様なユーザーをとりこめるようなデザイン並びに実際にユーザーを巻き込んだデザインプロセス。
 ユーザー自らが参加するデザインワークショップで最初から最後まで一緒にデザインプロセスを体験する。フィールド調査からプレゼンテーションまでフィールドユーザーに参加してもらう。
 いままでの市民参加,ユーザー参加は「お客さん」か「クレーマー」であった可能性がある。ほんとに同じテーブルについていたか。
・例えば電気製品,ポットを見えない人が利用する場合,コンセントの位置を確
認したり,台所は濡れているので不安がある。
 歯磨き粉も分量がわからないから口にくわえて量を確かめるが,不衛生である。
 ガムやチョコレートのように1個ずつのデザインなら高齢者でも使いやすい。いろんな人にも使える。
ユニバーサルデザインとの違い
 はじめからみんなに使いやすいデザイン。結果として誰もが使いにくいことがある。最適解が唯一つ存在するという思い込み。徹底して一人の個人の困難や工夫に注目する。
・「○○さんのために」という姿勢は助ける人助けられる人という構図を暗に仮定してしまう。これでは他人事である。「○○さんとともに」という姿勢で具体的なものを実際に作ってみる。横に視覚障害者や車椅子の人がいるのを忘れてしまうくらいにまで模索していく。
・ポストの上などに空き缶を置く人をゴミ箱に捨てるような方向に導けるか。置かせないようなデザイン,ゴミ箱に導けるようなデザインにすることが大事。
・ 自転車ミニワークショップについて
 「四条どおりを通りたい」なぜとおりたいのか掘り下げて止めたい理由を突き詰める。
 自転車利用は多様なユーザーがいる。ミニワークショップでは子供乗せとロードレーサーについて話をする。

・提案について
 自転車マイスター&免許制  3人乗り自転車免許
               ロードレーサー免許
               美しい駐輪マイスター
  マナー講習の義務化(大学新入生,転居者)
 戦略的撤去自転車数削減システム
・3人乗り自転車禁止の波紋。図書館に車で行くようになった。公園に車で行く
ようになった。こっそり乗っている人もいる。公共交通機関も不便で使いにくい。
 警視庁に苦情が殺到するようになった。3人乗せ自転車の研究開発に取り掛かる。1台7〜8万円くらいかかる。買う人が少なければますます値上がりする。
 結局,乗らない人の意見でこのようになってしまった。
・3人乗り自転車免許の発行を条例化する。
 子どもを危険にさらしたい親はいない。倒れない工夫で自転車に乗っている。子どもの安全には配慮している。
 前後に10kgを乗せてラインを走るテストをして免許を発行する。
 3人乗り自転車をレンタルして支援を行う。
 パワーとマナーがあれば乗ってもよしという条例を!
ロードレーサー免許
 自転車は車道を走れといっても,大量に自転車が走ると危ない。ある程度のスピードやサイドミラーを付けるなどマナーがあれば走ってもよいとする。路上駐車があると走行するのが危険である。
・美しい駐輪マイスター
 どうしても,路上駐輪をしたい人がいるかもしれない。美観に合うような,絵になるような自転車なら駐輪OKとする。自転車に乗る見本となる人を増やしていこう。そうして自転車のマナーをよくしていこう。
・マナー講習
 自転車の値段が安くなってきた。乗り捨てる人もいる。マナー教育の必要。免許制と連動。大学の新入生にマナー講習を義務化する。毎年25000人の新入生がいるので,5年で10万人になる。乗る人も乗らない人にもマナー講習をする。自転車のマナーを全体に伝える。
・なぜ路駐するのか。
 ちょっと停めた人,遠出するので一日停めた人,はなから捨てるつもりの人がいる。ちょっと停めた人とはなから捨てる人とを同条件で扱っているのはアンフェアな状況である。
・戦略的撤去自転車数削減システム
 目標をゼロにするのは無理。家電でも1万人あたり120台程度は捨てられている。捨てるひとはどこにでもいる。家電の数値を目標にしてもよい。
 撤去の現状把握が必要。アンケートなどにより。はなから捨てる気の人は引き取りに来ないから,フィードバックは無理なのでフィードフォワードで分析する。
 季節変動で3月が多いなら,明らかに大学生によるものである。大学で入学時に登録をして,卒業の時には自転車をどうしたかを調査する。

【意見交換】
○免許を持っているからルールを守っているのではなく,取締があるからルールを守っている。取締をどうしていくのかについてのアプローチは,インクルーシブデザインにはないのでは。
○取締を行っても,自動車では事故などはなくなっていないから,自転車でも同じことは言える。しかし,よかれという見本として免許がないともっと怖いことになる。免許制はステップとして捉える。いきなり取締だけしてもマナーはよくならない。望ましい自転車の乗り方を知る機会として講習等を行う。
○公のことは官,私的なことは民がという発想があるが,なんでも官が悪いというのではなく,市民もデザインをインクルーシブしてもらうという構造が必要である。
○免許制は取締のシーンが前提としてある。取り締る人がいないのではないか。
○免許をもっているかどうか,最初はいちいち停めて確認することになる。しかし,乗り方や走り方がふらふらしているような人を中心に停めていけばよい。全員を停めなくてもよい。
○撤去された人へのアンケート調査は行っていないが,府警からも盗難自転車が多いということで,2〜3回撤去されている人などの把握はしているかと言われている。撤去された人,放置する人に対するアンケートもやってみないといけなかと思っている。
○廃棄する自転車も最初にデポジット制で消耗品とするような協議も必要かと思う。
○ワークショップでも自転車取得税などが出た。
○撤去された自転車の流れを分析する必要もあると考えている。